お化けセット 45回目のサーフィン @辻堂

辻堂
台風でどしゃぶり
頭 セット頭半
タッパー(ベスト) サーフパンツ 

台風18号が日本の直前まで迫った日曜日。 初めてとなる辻堂へ行ってまいりました。

朝5時。 どしゃぶりの辻堂海浜公園の駐車場には、数台の車しか停まっていません。

「よしよし すいてるすいてる♪」

駐車場に車を突っ込み、車の中でもぞもぞ準備。 今日はプレセボタブレットの浮力を押さえ込む自信がないので、Bicにしました。 Bicにした理由はもうひとつあり、10月6日にスケパー前で行われる、サーフィン検定を受けてみようと思っているのです。

その日がもし波がでかくても、ゲッティングアウトにてこずらないようにBicで行く予定なので、それまでタブレットはお留守番です。 タブレットでのドルフィンは、ひきつづき今後の課題ということで。

打ち続ける雨に目を細めながら、駐車場から歩道橋を歩いてわたります。 波チェックをしたと思われる人たちは、みななにか言いたげな顔をしてすれちがっていきます。

海岸に着きました。 初めまして辻堂! 辻堂という名前の響きに、硬派なものを感じ、今までなんとなく敬遠してきました。 今日の辻堂はまさにぼくのイメージどおりハードです。

インサイドは、幾重にもスープがおしよせ、浜によせてくる水にすら危険を感じます。 アウトでは頭オーバーの波が、強烈なオフショアにあおられながら、爆発するように砕けています。 ぼくにあの波のどこに乗れというのでしょう?

まあいってみましょう。

沖には誰も見えませんが、ゲットしようとしている人は二人ぐらい見えます。 ぼくもゲットしやすそうなところをみつけて海に入ります。

鵠沼にくらべて、海へと入る砂浜の角度が急で、砂質は極小粒の玉じゃりで、小田原の海岸を思わせます。

打ち寄せる波に足をとられながら進んでいくと、突然床をはずされたように首まで海に沈みました。

「うわっ 深っ!」

まだ5歩も進んでないのに、ここからこげとおっしゃるですか?

仕方なくボードの上にのりパドルを始めます。 二つ三つをプッシングスルーでやり過ごすと、それを許さないスープがもしゃもしゃ近づいてきました。 ここからはドルフィンです。

もぐってはこぎ、もぐってはこぎしているのですが、進む気配がありません。 ただ、西へ西へと流されていくだけです。 一回仕切り直しです。

岸に上がりあたりを見渡します。

「ええ! ここまでっ?」

300mほど東に、ビーサンを置いた場所が見えます。 こんな短時間で仕切り直しってどうなの? と思われるかもしれませんが、海に入っていたのはほんの2~3分間ほどです。

ビーサンの方へ200mほど戻って、もう一度トライします。 歩ける浅瀬もたまにありますが、基本足はつきません。 先ほど同様、プッシングスルーでかわしきれなくなったらドルフィンスルーです。

1・2発はそれらしい形でドルフィンできますが、3回目ぐらいから怪しくなります。 4回 5回 ・ ・ ・

6回目 もう動けません。頭をふせてノーモーションでスープをむかえます。 ボードをめくられ、はじきとばされました。

「結構いいところまできたけどダメだぁ」

このままではゲットできない感が漂い始めました。 そうなると一度もボードの上に立てない日ということになってしまいます。 それはいやだ・・・

これ以上、沖へ出る力が残っていないので、再度仕切りなおしです。 岸へ戻るついでにミドルで割れている肩ぐらいの波に乗ってみることにしたのですが、立ったと同時にワイプアウト。 そのまま岸へ戻ります。

浜に上がると江ノ島の方の空で雷が光っていました。 

「やばいなぁ あぶないからもうやめようかなぁ」

遠くの雷をゲットできない理由にしようという思いが胸に浮かんできました。 

ふと沖を見ると、今まで気がつかなかったのですが、何人かラインナップしています。 

「うう~ このまますごすごと帰れねぇ」

とりあえずもう一度ビーサンまで戻ることにしました。

ビーサンまで戻り、体力の回復を待つべく浜に座って海をながめます。 タイミングをみはからってセットを避けたいのですが、必ず一度はくらいそうです。 それさえこらえればなんとかなる・・・?

HPは完全回復していないのですが、気持ちがあがってきたので海へ入ります。 ももまでつかって、セットの通過を待ちます。

セットが通り過ぎたところで出発です。 さっきから何度もくりかえしてきたように、小さいスープはプッシングスルーで、大きいスープはドルフィンスルーでかわしていきます。 西へ西へと流されながら、少しずつですが沖へと出て行っています。 

大きく押し戻されながらもセットもやりすごし、気づいた時には小さなうねりだけの時間がやってきました。 もうここはアウトの入り口です。

ラインナップしているサーファーの背中が見えてきました。 あと30mほどです。 ただ、まだ油断できない位置です。 早いところラインナップまで行かなければ・・・

そう思ってパドルするのですが、肩の限界がやってきました。

「ううう こうなったら最後の手段・・・」

ボードから下半身を落として、平泳ぎゲットです。 かっこ悪いけど、みんな沖の方をみてるから大丈夫。 20けりほどで肩が回復してきたのでパドルにきりかえ、ラインナップに到着です。

無限にせまるスープのインサイドに、爆発するようなブレイクのミドルでしたが、アウトサイドは普段と変わりなく、うねりが通り過ぎるだけの静かな世界です。

ただ、そのうねりの大きさが未体験。 頭と人間半分あります。 今まで頭半の「半」て、なんの半なんだ? と疑問に思っていたのですが、今実感としてわかりました。 これが頭半です。

近づいてくる頭半の波は、まるで山です。 ボードとぼくは、その山にものすごい力とスピードで持ち上げられます。 そのいきおいは、頂点で空中に「ぷりっ」とひねり出されそうなほどです。

東から吹き付ける風。 時おり痛いほど降り注ぐ雨。 そして山のようなうねりの波に上下させられていると、なんだかワクワクしてきます。 これはもう、これで遊びとして成立しています。

風に少しずつ西へ流されていきます。 たまにパドルしているのですが、元位置はキープしきれず、自分の位置を測る浜の目標物は、少しずつ西のものへと変わっていきます。

今はぼくを含めた5人が、小さな集団を形成しています。 みな思い思いのかっこうで、沖から来る波を見つめています。

その沖から、ひときわ大きな波が近づいてきました。 まわりのみんなにも、にわかに緊張が走ったのがわかります。 一人が自分の岸側を振り向いて確認しました。 きっと万が一板を流したときに、他のサーファーにぶつからないようにと、確認したんだと思います。

5人が巨大な波へパドルします。 波はゆうに人の倍はあります。 これがダブルってやつでしょう。 はたしてあんな波をドルフィンでかわせるものなのでしょうか?

波は50mほどまでせまったところで、崩れだしました。 まるで土石流です。 やばすぎる・・・ みるまにぼくらのところへ到達しました。 腕を伸ばして板を沈めます。

うまくやったつもりでしたが、かなり岸側へ引きずられてしまいました。 顔を上げると二つ目がせまっています。 急いでパドルです。

二つ目も一つ目同様、なんとかかわしました。 そして更に三つ目がやってきました。

腕を伸ばします。 

「のっ 伸びない・・・  板が沈まない・・・」

そう思った瞬間、波にさらわれました。 あらゆる方向から水の塊を押し込まれ、ぎゅ~っとつぶされていきます。 動くと余計な酸素を使うので、されるがままにしているのですが、いつまでたっても波はぼくを解放してくれません。

「うう・・・ 誕生日に死ぬのか・・・」

そう思った時にようやく乱水流は去りました。 酸素を求めて水面に上がります。

「ぷっはー」

沖を見ると、もうお化けセットは終わったようです。 せきこみ、涙と鼻水をたらしながら、ラインナップへ戻りました。

風はあいかわらず強く、抵抗しつつも西へ流されるため、まわりにいる面子は刻々と変わっていきます。 けれども、テイクオフを成功する人はぼくを含めまったくいません。 乗れそうで乗れない・・・

そんな中、ついにテイクオフに成功した人を見ました。 その人は一人だけラインナップより10mぐらい沖にいたので、彼がテイクオフして波を滑り降りていく様が良く見えました。

レギュラースタンスで、ぼくがいる方へ左へターンしながら滑り降りていきます。 ものすごいスピードです。 カッコよすぎです!

「やべえ 俺もあれやりてぇ!」

そう思ってテイクオフにチャレンジするのですが、まったくボードが走り出しません。

そんなことをくりかえしていた時です。 テイクオフに失敗して沖へ振り返ると、次ぎの波がせまっていました。

「ああ むしろこっちだった ええいのっちゃえ」

波が来るのをアイドリングのようなパドリングで待っていると、その波がだんだん掘れあがってきました。

「えっ なんかやばくない?」

時すでに遅し。 波はもう崩れる寸前の状態でやってきました。 こんなの乗ろうとしても絶対パーリングです。 

ボードをかかえてショルダーにぶちこみ、波から逃れようとしたのですがだめでした。 波はぼくもろともブレイクしていきます。 やばさは先ほどのお化けセットよりもあります。

もみくちゃにされて浮かび上がったときは、すでに波がブレイクする場所よりだいぶ岸よりにいました。 そして波は次々と襲ってきます。 

「無理だ もう無理だ・・・」

結局一度も波に乗れていないけどそれでいいのかっ?
そう叫ぶもう一人の自分もいたのですが、沖でパドルを続けていたのもあって、このまま沖へ引き返す体力はありません。 一度戻って休もう。 

そう思ってスープに押されて岸へ戻ろうと、スープにエントリーを試みたのですが、そのスピードとパワーに、またももみくちゃにされました。

あとでGoogle Mapで確認すると、1キロ以上西へ流されていました。 とぼとぼビーサンまで歩いて戻ります。 この後、1時間以上ゲッティングアウトを試みるのですが、二度と沖へ出ることはかないません。 ドルフィンを1発やっただけで、肩があがらなくなってきたので降参です。

駐車場へ戻ろうとするぼくに若者が声をかけてきました。

「どうですか? 危険ですか?」

「いやぁ 元気だったらいいんだけど、疲れちゃったら沖に出れないよ」

おいおい 答えになってないよ ていうか言い訳してどうする?(汗)

この日、茅ヶ崎でサーファーが一人お亡くなりになりました。 ご冥福をお祈りしております。

※この記事は2013年9月にJUGEMブログで公開した記事です。

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